ホーム



はじめに

1 惚れてしまえ!

2 ちらりと

3 光源氏計画

4 本当に惚れちゃった

5 惚れさせてしまえ!

6 あこがれ、依存、自立

7 手放すことを前提に

8 夫は友達

9 彼がいなくなる!

10 だけどね・・・

11 ママはひとりで十分

12 先輩への手紙 1

13 先輩への手紙 2

14 先輩への手紙 3


15 先輩への手紙 4

16 先輩への手紙 5

17 先輩への手紙 6

18 先輩への手紙 7

19 先輩への手紙 8

あとがき

 先輩はいつも、時間を惜しまず、僕の勉強を手伝ってくれました。 

 時々、どうしてこんなにまでしてくれるのかな?と思ったけど、先輩は僕と勉強するのが楽しそうだったので、だからだろうと思いました。 

 夜でも休日でも、僕が質問すると、先輩はいつでもすぐに答えてくれました。 

 先輩が僕のために使ってくれる時間がどれだけ多いか、今から考えると信じられないくらいだったのに、その頃の僕は、自分のことで精一杯で、少しも疑問に思いませんでした。 

 僕は夢中になりました。 

 先輩が、このケースはどうする?それは違うわ、これならどう?と質問してくれるたびに、一生懸命考えました。 

 そして、最後に「いいね!」と言われる時のうれしさ。 

 そのうれしさを、いくつもいくつも重ねていく楽しさ。 

 僕はもしかしたら、一生、あの時のうれしさや楽しさを忘れないかもしれません。 

 そうして、僕はまた勘違いをしてしまいました。 

 僕は先輩の教えどおりに、ものすごく成長しているんだって。 

 

 だから、結果発表の前に、先輩が話してくれたことを聞いて、僕は本当に、どうしようかと思いました。 

 僕は僕の勘違いに気付いたんです。 

 先輩の言うとおりです。 

 もしも先輩が「それは違うんじゃない?」「話がずれているよ」と教えてくれなかったら、僕は自分の間違いやズレに気付かなかった。 

 もしも先輩が「次はこう考えてみたら?」と教えてくれなかったら、一人で先を考え付くことができなかった。 

 先輩が一緒にいてくれたから、勉強も進んだし、わかった気持ちになれたんです。 

 先輩の、いつもの笑顔が消えた深刻な顔を見ながら、僕は混乱しました。 

 このまま内部試験に合格しても、僕はひとりではやっていけないのかもしれない。 

 先輩は、自分の教え方が間違っていたと言うけれど、そうじゃありません。 

 僕に力がなかっただけです。 

 それでも、その時は、大丈夫、合格したら先輩に心配かけないように、精一杯頑張ろうって思っていました。 

 それより、まぁ、合格しないだろうな、そうしたらまた、先輩のもとで勉強させてもらおうと思っていたんです。