ホーム はじめに 1 惚れてしまえ! 2 ちらりと 3 光源氏計画 4 本当に惚れちゃった 5 惚れさせてしまえ! 6 あこがれ、依存、自立 7 手放すことを前提に 8 夫は友達 9 彼がいなくなる! 10 だけどね・・・ 11 ママはひとりで十分 12 先輩への手紙 1 13 先輩への手紙 2 14 先輩への手紙 3 15 先輩への手紙 4 16 先輩への手紙 5 17 先輩への手紙 6 18 先輩への手紙 7 19 先輩への手紙 8 あとがき |
![]() |
「なんだかね、がっかりしちゃって・・・。」 前に会った時にはワクワクと輝いていた友人の、その日の表情はすっかり翳っていました。 もの知らずの天然ボケの部下を、ていねいに教え育てて理想の部下に成長させるべく、彼に夢中になって、ますます輝く上司でいようと、自己研鑽に励んでいるはずの友人が、どうしてこんなに元気をなくしてしまったのでしょう? いったい、何にがっかりしたの? あのね。私が思うようには育ってくれないのよ。惚れこんでみたものの、相手にそれだけの価値があるように見えないの。 価値? 確かに彼のミスを、以前と違って「今はしかたがない」と受け止められるようになったわ。だから、ミスをさせないためにはどうしたらいいか、ミスが起きたら次に繰り返させないためにはどうしたらいいかを考えるようになったわ。 うん、うん。いいじゃない。 彼のもの知らずも、今から私が教えればいいことと思って、楽しめるようになったわ。 うん、うん。それもいいわねぇ。 段取りのつけかた、物事の考え方、いろんなことを細かく話し合うのも、すごく楽しめているの。彼も、勉強になる、こういうのは楽しい!って、言ってくれるわ。 うん、うん。素晴らしいじゃないの。どこに問題があるの? あるのよ、問題が。反応はいいのよ。私も楽しい。でも、結果が伴わないの。 結果?成長しないってこと? そうなの。時々、以前のように、たまらなく使えない部下だなぁって思ってしまうの。そうして、がっかりしちゃうのよ。私は今、ものすごくムダなことをしているんじゃないかって気がして。 そうなんだ。どんな時にそう思うの? 会議中に居眠りをしていたり、仕事の指示をぜんぜん違う意味に捉えていて、何回言ってもわからなかったり・・・ 待って待って!そんなこと・・・ 信じられないでしょう? ちがう、ちがう。私は当然だって言いたいのよ!! なんですって?当然?? 当然よ。どうしちゃったの?あなたとしたことが、すっかり勘違いしているわよ。 勘違いなんて・・・ 聞いてちょうだい。あのね、今の彼というのは、20数年かけて築き上げてきた、ひとつの完成形なのよ。それがあなたというモノサシで測ると、至らないというだけで。 ・・・・・・ もしも、あなたが彼に対する考え方を改めてからの、この短い期間で、彼の20数年を一気に覆すようなことをしたとしたら、それは「育てる」ではなくて「マインドコントロール」なんじゃないの? ・・・・・・ 意味のわからない会議でもしっかり起きていて、あなたの指示を一度で完璧に理解できるような部下ならば、あなたは最初からイライラなんてしなくて済んだはずよ。 それは、そうね。 確かに、あなたが全力で育てているんだもの、すぐにあなた好みに変化してほしいと思う気持ちはわかるわ。でも、そうはいかないのもわかっているの。 どうして? だって、彼の生活の中には、あなたしかいないわけではないから。彼の時間の中には、あなたがいない時間もたくさんあるからよ。 ああ。。。。 彼を占領しようとしてはだめよ。惚れる、というのは、10代の恋愛みたいに「わたしひとりのことを見ていて!」なんてレベルの話ではないのよ。彼には自由に生きてもらわなくちゃね。 ええ・・・・ 彼には、いろいろな人の考えややり方に接してもらわなくてはね。その上で、あなたの教えたことを選んでくれたなら、それが本当の価値だと思わない? そうね。それはそう思うわ。 一時期、彼はあなたに依存して、あなたが与えてくれるものを必死で吸収しようとするかもしれない。でも、あなたの方が、彼を依存させるように仕向け続けていてはいけないと思うのよ。いつか、自立していくことを前提に、いつか、手放すことを前提に、愛情を注ぐのよ。 手放すことを前提に・・・ だって、あなた、ご主人がいるんだから、いくら彼に惚れたって、全ての生活をともにして、一生を過ごすってことにはならないでしょう? もうっ |