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はじめに

1 惚れてしまえ!

2 ちらりと

3 光源氏計画

4 本当に惚れちゃった

5 惚れさせてしまえ!

6 あこがれ、依存、自立

7 手放すことを前提に

8 夫は友達

9 彼がいなくなる!

10 だけどね・・・

11 ママはひとりで十分

12 先輩への手紙 1


13 先輩への手紙 2

14 先輩への手紙 3

15 先輩への手紙 4

16 先輩への手紙 5

17 先輩への手紙 6

18 先輩への手紙 7

19 先輩への手紙 8

あとがき

 僕は、年賀状くらいしか手紙を書いたことがありません。 

 しかも、送るつもりのない手紙を書くなんて、考えたこともありませんでした。 

 でも、この手紙は、どうしても書きたいと思います。 

 先輩に読んでもらうことはないけど、一生懸命書きます。 

 先輩、と呼びかけることをゆるしてください。 

 先輩は名前で呼べっていつも言うけれど、やっぱり、今はまだ、「先輩」です。 

 

 先輩に出会って、1年ですね。 

 最初はなんて長いんだろうと思っていたけど、振り返ってみると、あっという間でした。 

 いろんなことがあって、失敗したり、迷惑もかけたけど、すごく充実した1年でした。 

 先輩に、大事なことをたくさん教えてもらって、少しは成長したかなと思っています。 

 

 1年前、僕はとても自信を持ってこの会社に就職しました。 

 けっこういろいろとバイトもしてきたし、最初はうまくいかなくても、すぐに慣れたし、ほめられたり頼りにされていると思ってきたからです。 

 大丈夫、自分にはできると、いつも前向きでした。 

 だから、この会社に来て、いろんなことでいろんな人に叱られて、最初はほんとに驚きました。 

 怖い人たちだなと思いました。 

 まさか、自分のせいでみんなが怒っているなんて、考えもしませんでした。 

 

 暑くなってきた頃だったと思います。 

 何のことだったか、細かいことは忘れてしまったけど、誰かを怒らせてしまったときに、先輩が、なぜその人が怒っていたのか、わかりやすく説明してくれたことがありました。 

 自分が何気なく言っている言葉が、相手をイライラさせていたとわかって、すごく驚いたし、しまったと思いました。 

 先輩に言われなければ、いまだに気付いていなかったと思います。 

 多分、あの時から、僕は先輩を頼りにするようになったのだと思います。 

 


 いや、ちがうな。
 

 もっと前。 

 仕事が始まって3週間目くらい。 

 任された仕事を、ひとりでやりきれなくなってパニックになったときに、先輩は当たり前のようにやってきて、手伝ってくれましたね。 

 僕の代わりにその仕事をしながら、どうすればいいのか、簡単そうに説明してくれました。 

 聞いてもぜんぜん先輩と同じにはできなかったけど、どれほど助かったか、言葉では言えません。 

 きっと、あの時からです。 

 

 あ、違う。 

 違います。もっと前。 

 初日です。 

 出社初日に、僕は、ちょっとしたミスをして叱られていました。その時、その場に居合わせた先輩が、「まぁまぁ、これから気をつければいいのだから。」と、間に入ってくれました。 

 すごく、ほっとしました。 

 そうか。僕は最初から、先輩を頼りに思っていたんですね。