ホーム



はじめに

1 惚れてしまえ!

2 ちらりと

3 光源氏計画

4 本当に惚れちゃった


5 惚れさせてしまえ!

6 あこがれ、依存、自立

7 手放すことを前提に

8 夫は友達

9 彼がいなくなる!

10 だけどね・・・

11 ママはひとりで十分

12 先輩への手紙 1

13 先輩への手紙 2

14 先輩への手紙 3

15 先輩への手紙 4

16 先輩への手紙 5

17 先輩への手紙 6

18 先輩への手紙 7

19 先輩への手紙 8

あとがき

 「もう、責任とってよね!」 

 友人はそう言って登場したのですが、その姿を見て、私はすぐに「光源氏計画」がとっても順調に進んでいることを確信しました。 

 でも、そ知らぬ顔で聞きました。 

 何?何の責任をとれとおっしゃるの? 

 あのね。あなたのせいで、私、今大変なのよ。 

 あら、何が大変なの? 

 この間会った時に、ウチの新人の話をしたでしょう?なんとも理解し難いモノ知らずのトンチンカンの話よ。あなた、「惚れちゃいなさい」って言ったでしょう? 

 ああ、あれね。言ったわよ。その新人さんが、あなたの理想の部下になった姿を想像していたら、そのうち現実になるわよって言ったわね。 

 そう、それよ。帰ってからも、ちらり、とそのことを考えてみてって。 

 ええ、言ったわ。で、考えてみてくれたの? 

 あなたの言うことだもの。ちらり、と考えてみたわ。ミスのない書類を提出してきた彼を誉めているところ・・・ 

 (おや?「彼」ですって?)うんうん、それで? 

 それから、またちらりと考えてみたの。それから、もうちょっと想像してみて、それから、もう少し想像してみたのね。 

 それで? 

 あなたが言ったように、私の理想どおりになっているところを想像してみたのよ。ちょっとずつだったはずなの。最初は。ところがね・・・ 

 ところが? 

 気がついたら、朝から晩まで、彼のことばかり考えているのよ、私!! 

 (あら、本当に「彼」なのね!)まぁ! 

 ベッドに入ってからも、ああしたらどうなるかしら、こうしたらどうなるかしら、こうするよりああするほうがいいかもしれないなんて、彼のことばかり考えて眠れないの! 

 そんなに考えなくてもよかったのに。 

 今更そんなこといわれても困るわよ。 

 で、何か変化はあったの? 

 それがね。大ありなのよォ。 

 おしえて、おしえて!何が変わったの? 

 友人の説明をまとめると、その新人さんは、以前とは見違えるような意欲を見せて仕事をしているそうで、彼女と、かなりつっこんだコミュニケーションをとるようになったそうです。 

 友人は人材育成に関してはプロフェッショナルです。すでに彼がどのようなタイプで、どのように声をかけることで伸びていくのかを把握していました。 

 彼を、常識ハズレでイライラさせられる部下、と思っていた時には、ただただ戸惑っていた彼女も、「私の理想どおりに育つはずの貴重な人材」と見るようになってからは、友人の専門知識を駆使して、彼にあたったようです。 

 本当に彼が変化したのか、友人の見方が変わっただけなのかは、私にはわかりません。 

 明らかなのは、友人自身が大きく変化したということです。 

 ねぇ、私ね・・・・ 

 なに? 

 あのね、私ね、彼にね、どうも、本当に惚れちゃったみたいなのよ。 

 あらあら。大変。