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はじめに

1 惚れてしまえ!

2 ちらりと

3 光源氏計画

4 本当に惚れちゃった

5 惚れさせてしまえ!

6 あこがれ、依存、自立

7 手放すことを前提に

8 夫は友達

9 彼がいなくなる!

10 だけどね・・・

11 ママはひとりで十分


12 先輩への手紙 1

13 先輩への手紙 2

14 先輩への手紙 3

15 先輩への手紙 4

16 先輩への手紙 5

17 先輩への手紙 6

18 先輩への手紙 7

19 先輩への手紙 8

あとがき

 だけどね、私、今のままではいけないと思うの。 

 友人の目が真剣にキラリと光ります。彼女がこういう目をした時は、何かとても大きな決断をしたときなのです。 

 いけないって、どうして? 

 私ね、彼に頼ってほしくてたまらないの。何でも相談して、何でも一緒にしていたくてたまらないの。 

 私にはそのほうが楽しいし、嬉しいし、ワクワクドキドキして都合がいいことばかりよ。だけど、長い目で見たら、彼にとってはよくないことだわ。 

 短い期間ならいいの。なるほど、これはこうやるのかと見て覚える期間なら、何でも一緒でいいのよ。だけど、いつまでもずっとそうしていたら、彼は私を頼らなければ何もできない人になってしまうわ。 

 もともとあれだけトンチンカンで、今だって、愛情抜きで見たら、ボケボケしていて大変よ。その上まだ人頼みでは、世の中渡っていけないじゃないの。 

 今になって分かったわ。神様がどうして彼を海外に行けるようになさったのか。 

 きっと、私に出会ったからね。 

 このまま彼を私のそばにおいたら、私が彼を損なってしまうとお考えなんだわ。 

 だったら、私、神様に応えなきゃ。 

 どうするつもり?と問いかける私に、彼女の笑顔は寂しすぎました。20代の女性には決してできない笑顔です。 

 今ね、彼の中には私がいっぱいなんだと思うの。 

 え? 

 子育てと同じよ。ママの言うことでいっぱいなの。彼もそう。いつも私がそばにいて、安心しきって、油断しきって、のびのびとしてきたの。失敗しても怖くない。だって、助けてもらえるから。できないことがあっても大丈夫。だって、代わりにやってもらえるから。そう思っているわけではないだろうけど、そういう安心感はあると思う。 

 ええ。 

 でもね、私、彼のママになるのはイヤよ。ママはひとりで十分だもの。 

 そうね。そのとおりね。 

 だからね、ここらへんで、彼に私を注ぐのをやめてみようと思うのよ。 

 なるほど! 

 彼の中に私が空っぽになるまで、待ってみるつもり。 

 できる? 

 そりゃ、難しいわよ。うずうずしちゃうかもね。でも、やらなきゃ!

 だって、私本当に、彼のこと、好きなんだもの。彼に幸せでいてほしいんだもの!今と同じように、幸せな笑顔で見つめてくれる彼でいてほしいんだもの!彼が自立するのを応援しなきゃ。

 その応援が「我慢」なら、私、我慢するわ!
 

 キラリ。 

 彼女の目がまた、光りました。