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はじめに

1 惚れてしまえ!

2 ちらりと

3 光源氏計画

4 本当に惚れちゃった

5 惚れさせてしまえ!

6 あこがれ、依存、自立

7 手放すことを前提に

8 夫は友達

9 彼がいなくなる!

10 だけどね・・・

11 ママはひとりで十分

12 先輩への手紙 1

13 先輩への手紙 2

14 先輩への手紙 3

15 先輩への手紙 4

16 先輩への手紙 5

17 先輩への手紙 6

18 先輩への手紙 7

19 先輩への手紙 8

あとがき
 「ほれてしまえ!」

 

 目をまんまるにした友人のリアクションは、当然、 

 「はぁ?!」でした。

 

 何を言い出すのよ。惚れろだぁ?!いったい、どうやったらそういうことになるわけ?? 

 あのねぇ、あなた、神様に見込まれたんだと思うのよ。そんな天然素材、普通の上司に預けたのでは、たちまち使えないという烙印を押されてポイよ。だから、あなたみたいな面倒見のよい上司に預けて、育ててもらおうって、神様が計画なさったから出会った仲だと考えてみてよ。 

 はぁ、神様ねぇ。 

 でもさ、いくら神様の計らいだからって、耐えられないこともあるじゃない? 

 そうそう、そうなのよ。私はそこを強調したい!! 

 わかった、わかった。確かにね、あなたのように、「今ここ」の充実を大事にするタイプの人に、この状況はしんどいわよね。できれば部下と快適な意思疎通の元に協力して、素晴らしい成果をあげ、喜びを分かち合いたい!と思うあなたのような人に、喜びの分かち合いどころか快適な意思疎通もままならない相手ではね・・・ 

 分かってくれると思ってたわ!!そうなのよ。まったく、どういう構造しているのか、何を考えているのか・・・考えていればの話しだけど・・・わからないんだもの。ねぇちょっと、理解してくれているのに「ほれてしまえ」ってどういうことよ? 

 つまりね、現状は変えがたい。でも、変わってくれないとあなたがいたたまれないってことでしょう?だったら、変えられるのは何?あなたの考え方じゃないの? 

 私の考え方? 

 あなたは、今の彼しか見ていないわ。今、意味不明の彼。今、常識ハズレの彼。今、仕事ができない彼。今、イライラさせる彼。それは事実だろうけど、今まであなたが育てたどの部下だって、登場した最初からみんなバリバリ仕事ができたわけでもなかったでしょう? 

 それはまぁ、そうね。でも、基盤はしっかりしていたわよ、年齢相応に。 

 今回はその基盤もないってわけね。だからこその計画よ。 

 計画? 

 そう。光源氏計画。 

 何それ? 

 高校生の時に習ったでしょう、『源氏物語』。光源氏君はね、18歳の時に、まだ10歳くらいだった若紫ちゃんをひきさらってきてですね、自宅に引き取っちゃうのよ。「ボクが愛してやまない藤壺さん(義理のお母さんなんだけどね)の血を引き、こんなに似ているこの子だもん。いまからよくよく教え込んで、完全に自分好みの女に仕立てるぞ!」ってね。 

 はぁ、犯罪だね。 

 それがね、当時の習慣では犯罪でもないんだな。後々、ちゃんと結婚してるしね。 

 へぇ。それで? 

 あなたのその天然部下さんもさ、スポーツしてたっていうからには、外見だけはあなた好みに、均整の取れた筋肉質だったりするんじゃないの? 

 まあね・・・確かに・・・からだは美しいわね。言われるまで気づいてなかったけど。 

 背は高いの? 

 う〜ん、私よりは高いかなぁ、そういえば。 

 じゃ、顔立ちは?どこか好みの部分はないの? 

 え〜?そうだなぁ・・・強いてあげれば、眼がきれいかな。曇りがないというか・・・曇るだけの人生経験がないってことだろうけど・・・・ 

 眼がきれい。すばらしい!それでいいわ。 

 何がいいのよ?? 

 それじゃぁね、これから私が言うとおりに想像してみてね。あくまで想像だから、現実離れしていて当然だからね。いい?その均整の取れた美しい筋肉のからだに、きれいな曇りのない眼の青年の中身がですね、あなたがホレボレするほどの素晴らしい人格でいっぱいになっているところを想像してみて。どう? 

 う〜ん、想像し難い・・・ 

 がんばれ!ここが勝負よ。 

 え〜っと・・・ 

 例えば、あなたにちょっと困ったことが起きる。
 彼がすっと寄ってきて「私にできることはありませんか?」と尋ねる。
 それから・・・例えば、彼が営業に出かけようとしているので、あなたが声をかける。「○○さんに会ったらね・・・」すると彼が全てを聞かずにこう言う。「はい!△△とお伝えすればいいですか?」あなたは深く頷く。「そう。ヨロシクね。」以心伝心。素晴らしいとあなたは感動する。
 それから・・・こんなのはどう?あなたが出張から戻ってくる。机の上はどうせ書類の山だろう・・・げっそりしながらデスクにもどると、彼が飲み物を運びながら現れてこう言うの。「お疲れ様でした。これ、どうぞ。お机に書類が溢れそうだったので、ちょっと整理しておきました。余計なことだったらすみません。で、ボクにもできそうなものがあったので、やってみました。後でチェックしていただけると嬉しいのですが・・・」なんてね。もちろん、チェックしたらミスなしなのよ。
 

 ああ、ほんと現実離れしているだけに、感動するわねぇ。ついでに、「今日は元気ないですね〜病気にならないでくださいね。」なんて声をかけてくれたり、「あ、そのスーツ似あってますね!」なんて言ってくれるとさらにうれしい。 

 そうそう、その調子よ 

 それで、そんな想像してどうするの? 

 「思えば叶う」が私のモットー。いつも話しているわよね。 

 ええ、まぁ。 

 つまり、あなたがそう思っていれば、それが実現するってことよ。 

 まさかぁ!ありえないっ。 

 まぁまぁ、じゃあさ、明日仕事に行く前までにさ、ほんのちょっとでいいから、今の想像の続きを考えてみて。ほんとに、ほんのちょっとでいいから。それくらいならできるでしょ? 

 ちらりとでいいの? 

 そう、ちらり、とね。 

 

 私は、知っていたんだな。その、ちらり、が、彼女を変えることを。