ホーム はじめに 1 惚れてしまえ! 2 ちらりと 3 光源氏計画 4 本当に惚れちゃった 5 惚れさせてしまえ! 6 あこがれ、依存、自立 7 手放すことを前提に 8 夫は友達 9 彼がいなくなる! 10 だけどね・・・ 11 ママはひとりで十分 12 先輩への手紙 1 13 先輩への手紙 2 14 先輩への手紙 3 15 先輩への手紙 4 16 先輩への手紙 5 17 先輩への手紙 6 18 先輩への手紙 7 19 先輩への手紙 8 あとがき |
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ねえ、「なにとなく 君に待たるるここちして」って歌ね、続きはなんだっけ? ああ、与謝野晶子ね。「なにとなく 君に待たるる ここちして いでし花野の 夕月夜かな」でしょう。色っぽい歌よね。 それがね。そんな体験をしたのよ。 まぁ!ステキ!!話して!聞かせて〜! あのね。その日はそれぞれに忙しくて、午後からだったかしら、彼は彼の仕事で飛び回っていて、私は別室に立てこもって資料作りをしていたの。急だったから、いつもはどこにいるかを彼に伝えておくのだけど、その日は伝えられなかったのよ。会えなかったから。 うんうん、それで? ようやく資料ができあがったのが、もう残業もいいところの時間だったの。当然、彼はもう帰っていると思ったわ。彼にはそれほど遅くなるような仕事はないはずだし・・・。私はその日の資料について、ちょっとした手書きのメモを作って、それでおしまいってところまで来ていたのね。それがふと・・・ ふと?なに?感じちゃったの?? そうなのよぉ。ふとね、彼が私を探しているんじゃないかって気がしたの。 うんうん。 それでね、ちょうどメモを書くのに使う赤ペンが手もとになかったのもあって、デスクに戻ることにしたの。 うんうん、うんうん。 そうしたら!もう退勤するばかりの支度をして、鞄を抱えた彼がいたのよ!用もなさそうな書類を持って!! あらぁ!あなたが来ないか、待っていたのね〜〜 本当のところはわからないの。でもね、私を見つけたとたんに、彼は書類を片付けてしまって、部屋中に響くような大きな、うれしそ〜な声で「お疲れ様です!お先に失礼します!」って言うのよ。 まぁぁぁ!うれしそ〜にねぇ。 正直ね、私、本当に疲れていたの。だけど、その「お疲れ様です!」を聞いたら、疲れが消えちゃってね〜。 うふふふ。ステキな話だこと!それが恋のパワーよね〜。 ええっ?そんなことぉぉぉ・・・ いいじゃないの。職場に思い人がいることほど、仕事を楽しくする秘訣もないと思うわよ。歳の差なんか関係ないっ。 そうかしら。でも、だからといって、彼が私に「惚れる」なんて、ありえないと思うわ。 ありえないことなんてないわよ。だいたい、その天然部下さん、すでにあなたのことをずいぶん信用して、大事に思っているみたいじゃないの。 それはまぁ、そうかもね。 だったら、もうひといきよ。 何よ、それ。あなたいつも、「人の心はコントロールできない」って言うじゃないの。彼の心をコントロールして、私に惚れさせるなんて、おかしいわ。 そうじゃないわ。コントロールするんじゃないの。 え?じゃ、どういうこと? あのね。人が人の力を借りて成長するときって、三段階あるように思うのね。世阿弥がそれを「守破離」と表現したのは聞いたことがあるでしょう? あるわ。 私流に表現するなら、それは「あこがれ、依存、自立」になるんじゃないかと思うわけ。 あこがれ・・・ そう。この人いいな、すごいな、なんだか尊敬しちゃうな、って感覚がまずあって、この人から吸収したい、この人が理解していることを自分も理解したいって思うようになるのが最初。 それで? 次は、その相手から何もかも吸収したくて、何でも話したくて聴きたくて、離れがたく思う時期があるのね。 うん。 そうやっていろいろ吸収して、いずれ自分の考えとしてきちんと腑に落ちた時、その人は今度自立の道を進むのよ。 なるほど〜。 私が「惚れさせてしまえ」といったのは、相手をコントロールして恋愛感情を抱かせろということではないの。彼があなたから、思う存分大事なものを吸収したいと思うように、あなた自身が輝きなさいねってことなのよ。 ああ、そういうこと〜。 そうなれば、彼はますますあなたの言葉に真剣に耳を傾け、あなたを理解しようとするでしょう。そうすれば、あなたが最初に目指したように、あなたの理想の部下にますます近づくじゃないの。 そうね。わかったわ。よくわかった。やってみるわ、私! ただし、少しずつよ。相手のキャパを見誤ってはだめよ。急いでもダメ。少しずつ、少しずつ、気長に温かくよ! ふふふ。わかったわ。なんか、ヤル気出てきたぁ! |