「人間ドックが『病気』を生む」という本を出した渡辺さんという方の話。
還暦を期に健康診断を全てやめた方だとのこと。ツッパリばあさんとしては、見習うべき方だ。
この方は、若い時は健康に神経質だったそうだ。人間ドックは欠かさず、結果が出るまでは、心配で半病人状態だったとのこと。ここは私とは、ちょっと違いがある。人間ドックは余りしなかった。せいぜい、職場での健康診断を欠かさず受ける程度だったし、結果が出るまで半病人などということは無かった。「何も言われるはずがない」と信じ切っていたのかもしれない。
「還暦を期に検診は全てやめた」というほど徹底はしていないのも、この方ほどに立派ではないところ。「早期発見」は大事だと思っているから、一応やれる範囲ではやる。
退職したばかりの時は、市民健康診断のようなことしかなくなって、血液検査と尿検査くらいしか無料では受けられなかった。500円出せばもう少し詳しい検査をしてくれるというので、その範囲でやってもらっていた。人間ドックとはほど遠い状況。
現役の時にバリウム検査で引っかかって、一度だけ「胃カメラ」になったことがあった。その時も「一度くらい胃カメラをやるのも経験だ」という調子で、体験気分で出掛けた。が、旧式の古いカメラでこりごりして、金輪際胃カメラはやらないぞと誓った。しかし、今年はどうしてもまた胃カメラをやらねばならぬことになった。前回で懲りているから、仕方なしに渋々出掛けたが、今回はずいぶん楽になっていた。これなら必要な時にはやっても良いと考えを変えた。コロリと変わってしまう単細胞が分かる顛末。
大腸癌検診で引っかかったこともあった。訳知りの同僚によれば、検査機関も引っかかる人を出さねばならぬから、何人かにひとりは引っかかったことにするのだとのこと。
ホントはどうなのか分からぬが、とにかくカメラを入れることになり、またまた体験気分で出掛けた。ちょうどその頃、研究会の先輩が大腸癌になっていたから、まるっきりの体験気分とはいかなかったが、それでも半病人になるほどではなかった。
結果はさんざんだった。胃カメラとは比較にならない痛さと気持ち悪さで、2度目に引っかかった時には「検査を受けに行くことで病気になりそうだから」との理由で断ったほど。あれは1回経験すれば結構だ。
そんなこんなで、渡辺さんほどには徹底できていないが、それでも人間ドックで「異常」と言われるたびにドキドキしなくてはならぬから、受けない方が良いとの論には賛同する。
高齢者の仲間入りをすれば、全くの「異常なし」になることの方が珍しくなるだろう。今のところ内臓関係は「異常なし」で、胃カメラの結果などは「3年後くらいにまた検査すればいいでしょう」などと、のんきなことを言われる始末だが。
かたや、腰や膝が痛いとか、具合がわるいとかの話になると「年のせいですから・・・」で片づけられて、ロクロク治療はしてもらえない。自分で何とかしろと言うことらしい。
足腰にガタが来ても直しようがないのに、内臓ばかり治したら、寝たきりや要介護5などの高齢者が増えていくことになる。足腰が弱り、出歩いたり、自分で日常生活が管理できなくなった頃には、内臓も弱って死に至る。それまではできることを楽しくしていく。という方が人間らしい生き方ではないかと思う。
それならお前は、どうして検診を中途半端に受けるのかと言われそうだが、内臓系の病気になり、家族や周りの介助が必要な状況で、長く生きてしまうことは避けたいと思うから、というのが理由だろうか。いまはあっさり死なせてくれず、病気を中途半端に治してしまうから、ズルズル生きてしまう場合も多い。早期に見つけて治療すれば、またそれなりに自立した生活ができる。できるだけ迷惑かけずに生きるためには、早期発見での治療も必要だと思うので、残念ながら渡邉さんほどには徹底できない。
何とも歯切れの悪い、中途半端にツッパっているばあさんのていで、今回はカッコ悪いが、これが本音と言うところだろう。
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