横浜事件再審開始決定を伝える紙面
内容に精通しているわけではないが、戦時中の言論弾圧として注目していた横浜事件。再審請求をするたびに、門前払いを食っていたので気になっていた。
今回、第4次請求に出された新証拠が「無罪とすべき明確な証拠である」と認められ、再審開始を決定したことが、大々的に報じられた。
戦時中、特高警察がでっち上げた「言論弾圧事件」は、数限りなくあるだろう。三浦綾子さん原作で、青年劇場によって上演された『銃口』のように、子どもたちを思う真面目な教員達を「アカ」の名の下に弾圧した事件。
『母べえ』として山田洋次監督が映画化した、野上さんの父上のようなケース。など、など。数え上げればきりがないのだろう。
そんななかでも「横浜事件」は、逮捕された人数が60人以上と多く、戦後審理中の被告は免訴になったのに、有罪判決を受けた被告の名誉は回復されないまま、今日に至っていた。名誉回復を訴えて、再審請求しながら、認められぬまま亡くなってしまった被告達。どんなにか無念であったろう。
しかし、遺族が引き継いで再審請求を続け、20年以上も粘り強く訴え続けて、再審請求を勝ち取った。
「父親は間違っていない。何としても、間違いを正したい。この訴えは、父の個人的問題ではないんだ」との信念で、請求を続けたとのこと。
幸か不幸か私には、それほどまでのエネルギーを、注ぎ続けるような「事件」はない。
「お国のために徴用され、過労死した父の損害賠償」を国に求める裁判を、起こせないことはないのかもしれないが、証人となるべき母は亡くなった。徴用先の会社は、今の日立らしいということしか分からないから、起こしようがない。
同様の状況にある人が、日本中に何人くらいいるかも分からない。もし、かなりの人が居るならば、その人達と力を合わせて、国の責任追及ができるかもしれないが・・・
戦争という異常事態が、憲兵などという「狂的」人間を生み出したのだろうが、それにしてもどうなったら、平気で拷問を加えられるような人間を作れるのだろうか。
ドイツのナチスゲシュタポでも同様だったようだ。アウシュビッツやビルケナウでガイドさんから聞いた話によれば、ユダヤ人に対してすごい拷問をしていたSSやゲシュタポが、家に帰るとクラシック音楽を聴き、子どもたちの良きパパだったというのだ。
どう考えても、拷問と良きパパは一致しないのだが。
普通のおじさんが、どんな教育を受けて、憲兵やSSになっていくのかを、詳しく知りたいと思う。再び、横浜事件が起きないためにも。
横浜事件が再審で、はっきり無罪となることを願う。今もある「言論弾圧」に影響を及ぼすことを信じて。
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