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2008/04/21 No.055 ITの工事進行基準会計 ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓ ★ 実践プロマネのメールマガジン ★ (プロマネ経験からの実践的なアドバイス) ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ 現行のITシステム開発の会計基準は工事完成基準です。 長期大規模プロジェクトでも、システム開発完了、 引渡し、検収でシステムベンダーは収益を計上することになります。 ところが、2009年4月から工事収益の計上(*1)が 工事進行基準に変わります。 「工事」というと土木業、建設業、エンジニアリングなどを 想像しますが、ソフトウェア開発も工事進行基準の対象となるのです。 建設業において、工事進行基準の会計は 一部で既に導入されています。 建設業では、最終的な完成物は工事開始時点である程度明確であり、 施主も工事関係者も図面でその姿を共有することができます。 また、工事進行に合わせて資材の手配状況、工事の進捗も 目視で確認することもできます。 工事担当の示す工程表と実際の進捗の整合性も 容易に確認することができます。 では、ソフトウェア業界で工事進行基準の適用は容易でしょうか。 欧米ではソフトウェア開発受託にも工事進行基準会計が 既に適用されています。 ITシステム開発では開発当初の見積もりに不確定要素が多く、 開発規模が当初想定より拡大することがあります。 このような場合、最終的に不採算を引き起こすことになります。 特に大規模開発プロジェクトではプロジェクト発足時に 要件が確定しておらず、最終的な原価はベンダーの見積もり金額から 大きく膨れる傾向にあります。 工事進行基準の会計が適用されるのは、 工事契約に関して成果の確実性が認められる場合であり、 1)工事収益総額 2)工事原価総額 3)決算日における工事進捗度 の各要素について信頼性をもって見積もりが可能な場合に限られます。 1)の工事収益総額については発注側、受託側双方で 契約金額等に関する合意が必要です。 この合意は受託ソフトウェア開発でも可能です。 2)の工事原価総額は必ずしも明確ではありません。 プロジェクト開始時点では要件定義も十分ではなく、 詳細仕様まで詰められていません。 要件変更によって追加工数も発生し、適切な工事原価総額の 見積りが困難な場合が少なくありません。 3)の決算日における工事進捗度についても かなり厳密な進捗管理、コスト管理がなされていなければ 信頼性の高い見積もりはできません。 協力会社の作業進捗にも影響しますし、 決算日と分割検収時期が一致していなければ その時点の正確な原価ははじけません。 現状、受託ソフトウェア開発では 正確な原価計算ができる手法は存在しないのでしょうか。 PMBOK(*2)ではEVM(アーンド・バリュー・マネジメント) という管理手法を採用しています。 作業の進捗や達成度を金銭的に表現したEV(アーンド・バリュー)を 尺度として、プロジェクトのコストとスケジュールを定量的に評価し、 一元的に管理するプロジェクト管理手法のことです。 ある時点でのプロジェクトの成果とプロジェクト開始時に 予測したその時点での見積りを比較することが基本です。 この比較から、プロジェクトが完了状態からどれほど 乖離しているかについて認知できます。 既にプロジェクトに投入された作業量から、完了時点までに どれほどのリソースが必要になるが見積もることができます。 本来、EVMはプロマネがプロジェクトの進捗の遅れや 予算の超過を早期に発見し、問題が生じる前に適切な判断を下して 先手を打つことが目的の管理手法ですが、 この管理手法を工事進行基準に適用することが可能です。 今まで、受託ソフトウェア開発ではプロジェクト単位に 決算日を意識した厳密な原価計算はしてきていません。 EVMが工事進行基準にとってベストではありませんが、 他の最適な管理手法が見当たらないかぎり、現状では有効な手法です。 2009年4月からの工事進行基準の会計に移行されると ソフトウェア業界ではプロジェクト単位の混乱は避けられません。 上場会社を対象として2008年度から四半期報告制度の 導入も始まっています。 内部統制の観点からも、EVMなどのプロジェクト管理手法を駆使して、 工事進行基準の会計の適用が可能となるよう 2008年度から十分な準備をしておきたいものです。 注*1)工事収益の計上 長期の請負工事に関する収益の計上については、 工事進行基準又は工事完成基準のいずれかを選択適用することができる。 (1) 工事進行基準 決算期末に工事進行程度を見積り、適正な工事収益率によって 工事収益の一部を当期の損益計算に計上する。 (2) 工事完成基準 工事が完成し、その引渡しが完了した日に工事収益を計上する。 注*2)PMBOK 米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)が提唱する プロジェクトマネジメントのための標準的なフレームワーク (知識体系:body of knowledge)──すなわちプロジェクトを 実施する際の基本的な考え方、手順をまとめたもの。 事実上の国際標準になっている。 参考文献:@IT情報マネジメント ご意見ご質問のメールはこちらからお願いします。 ITシステム開発の実践プロマネホームに戻る |
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