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はじめに

1 イライラ合戦

2 まず一歩

3 もう我慢できないっ!

4 こんな会社辞めてやる

5 自分の心にもぐりこめ!

6 本心を語ろう

7 出会えた喜び

8 繰り返される人間関係

9 必要だったから

10 はるかさんの自己受容

11 シンクロニシティは突然に

12 やよいさんの自己受容

13 ますみさんの生き方

14 再スタート

15 決意を行動に

16 それぞれの人生

おわりに

いいんだ!

  それぞれの人生

 あれから、1年ほどの時が流れました。


 一番変わりなく、マイペース人生を歩んでいるのは、はるかさんです。

 はるかさんは相変わらずそそっかしく、聞き間違えたり勘違いしたりを繰り返していますが、あの出来事以来、人から馬鹿にされているのではないかと感じてイライラすることが少なくなりました。状況は何も変わっていないのですが、はるかさん自身が、「私の人生はこれでいいんだ!」と、自分の生き方に自信を持ったためでしょう。



 逆に、一番大きく人生を変えたのは、ますみさんでした。

 あのあと、ますみさんとやよいさんは、親友になりました。

 ある日、ますみさんは職場で嫌なことがあって腹を立てつつ歩いていたら階段を踏み外してしまい、足を骨折してしまいました。

 救急車で運ばれて・・・という連絡を受けたやよいさんが病院に行ってみると、いつものように、ますみさんはカンカン。「まったく、あのバカ女が私を怒らせるから、こんなことになって、頭にくるったらもうっ」と悪態をついていました。やよいさんが一生懸命なだめたのは、もうお決まりのパターンです。

 長い入院生活は、ますみさんにとってさぞ退屈だったろうというと、そうではありませんでした。

 やよいさんが朗読ボランティアをかってでたので、仕事帰りのやよいさんがやってきて、本をよんでくれ、それについて二人で語り合う時間が、ますみさんをとても元気にしました。

 さらに、驚くことがありました。

 なんと、ますみさんは、熱心にリハビリを指導してくれた理学療法士の男性と恋に落ちました。うそ〜っ!とやよいさんが驚いている間に、2人はますます親密になり、あっという間に婚約してしまったのです。

 退院すると、ますみさんは潔く会社を辞めてしまいました。そして、彼と一緒に生活できるスキルを身につけるのだと言って、料理を教えてくれる人を探し、英語を教えてくれる人を探し、花嫁修業の真っ最中です。

 最初は不安を持った2人のご両親も、2人の人柄をそれぞれに知るうちに、いつしか応援団に変わっていました。幸せいっぱいの2人は、結婚式を挙げたあと、彼の留学先へ向けて3年間の新婚旅行に出る予定です。



 一方、「実害がないならいいじゃない」という、やよいさんをブレイクスルーさせる言葉を教えてくれたさくらさんは、この1年の間に、在宅での商売を始めました。彼女の得意なインターネットを利用して、コツコツとビジネスシステムを組み上げ、利益を上げ始めました。

 やよいさんが電話をするたびに、仕入れをしたの、これだけ売上があったの、と楽しげに報告するさくらさん。夢は「愉快に楽しく淡々と生きる億万長者になって、この世から不愉快で暗く右往左往して生きている貧乏人を無くすこと」なんだそうです。その話しを聞くたびに、やよいさんは笑ってしまいますが、心に響くものがあるのでした。



 最後にやよいさんです。

 やよいさんは、あの時、チームのメンバーが持ち帰った素晴らしい情報をもとに、大きな新規顧客の開拓チャンスをモノにするべく結成された特別チームのアシスタントとして、しばらくの間Aチームを離れて仕事をしました。

 やよいさん自身が企画を出したり、意見を言ったりする立場ではなかったのですが、会社の頭脳の粋と言ってもよい人々がそれぞれの部署から選び出されて構成された特別チームでの話し合いの数々を実際に見聞きすることができたのは、やよいさんの考えを大きく変えるきっかけになりました。

 そこには「打てば響く」、やよいさんが大好きなタイプの人ばかりが集まっていました。ポジティブな人もネガティブな人もいましたが、みんなが「自分の意見を通すため」ではなく、「この会議でいかに素晴らしい内容を練り上げるか」に集中しており、時にはツバを飛ばしあうような激しい議論がありましたが、人間関係が崩れることは一切なく、互いに尊重しあっていることが若いやよいさんの目にもはっきりとわかるのでした。

 やよいさんは思いました。

 はるかさんのことで何か思いつめることはずい分減ったけど、私はどうしてもあの人が苦手。でも、それでもいいんだ。誰とでもうまくややりたいなとは思うけど、うまくいかないこともある。思いやりの心を持つことはできるけれど、みんなを好きになることはできないな。

 でも、私はますみちゃんのことなら、心の底からサポートしたい、楽しくいてほしいと思うことができる。だったら、はるかさんのことは、はるかさんをそんなふに思える人にお任せして、私はますみちゃんを思う時のように思える人たちと共に生きていきたい。

 もしも、そんな人たちと、何かをすることができたら、どんなに楽しいだろう!どんなに力が出せるだろう!もう、考えただけでワクワクする!!!!!

 もう一つ、その特別チームを経験したあと、やよいさんは仕事の仕方を変えました。以前は何でも自分でやり遂げることが大事だと思って頑張っていたのですが、無責任にならない範囲で、協力をあおいだり、教えを乞うたりすることを覚えたのです。

 やよいさんが仕事熱心なのはみんな知っていますから、お願いするとみな熱心に教えてくれました。急いで終わらせたいので手伝ってくださいと勇気を奮ってお願いすると、みな、いいよ!と手伝ってくれました。また、「今日は手伝って」と頼まれることも増えました。お手伝いすることが増えただけ、お願いするのも心置きなくできるようになりました。

 そんなふうに仕事の仕方を変えてみると、以前は毎日のように残業をしていたのに、定時で終わってしまうことが増えていきました。

 やよいさんは、新しくできた時間を、今一番興味を持っていること・・・人の心の不思議さや、人間関係のこと・・・を学ぶための時間にすることにしました。読書をしたり、講演を聴いたりしてきましたが、今度はカウンセラー養成講座に出席することにしました。

 2年後を目標に、今の仕事を辞めて、今学んでいることをメインにした人生に進もうと思っています。カウンセラーになりたいのか、違うことがしたいのか、まだはっきりはしません。けれども、苦手な人のために心を煩わして生きるのではなく、自分と気の合う人々とチームを組んで、心から支えたいと思う人々のために力を尽くす人生を歩んでいる自分を思い描いて、懸命に働き、真剣に学んでいます。



 よいことばかりの人生もないけど、悪いことばかりの人生もない。

 私は心から応援できる誰かに出会いたい。誰かから、心から応援されたい。そんな気持ちを教えてくれたあの出来事に感謝しよう。やよいさんはそう思っています。

 まだまだ未熟だけど私は私。これで、いいんだ!