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はじめに

1 イライラ合戦

2 まず一歩

3 もう我慢できないっ!

4 こんな会社辞めてやる

5 自分の心にもぐりこめ!

6 本心を語ろう

7 出会えた喜び

8 繰り返される人間関係

9 必要だったから

10 はるかさんの自己受容

11 シンクロニシティは突然に

12 やよいさんの自己受容

13 ますみさんの生き方

14 再スタート

15 決意を行動に

16 それぞれの人生

おわりに

いいんだ!

  決意を行動に

 やよいさんの心からは、ミーティングが終わっても、机の上の書類を片付け始めても、重苦しい落ち込みはなかなか消えていきませんでした。

 その時ふと、やよいさんは、昨晩、「自分が感じたことは何でも自分の一部だから、大事にしよう」と決意したことを思い出しました。

 そうだった。危うく忘れるところだったわ。このまま一生落ち込みっぱなしということもないでしょうから、気持ちが沈んでいる間は、沈んでいる自分の感情を大事にしよう。

 やよいさんは、しばらくの間、自分の重苦しい気持ちを観察してみました。

 そうか、私は、こんなふうに、自分がしてきたことを反対されると、ものすごくがっかりして、こんなに暗い気持ちになるんだ。

 その時でした。

 はるかさんが、声をかけてきました。

 「2週間も休んで、元気になったかと思ったのに、まだ暗い顔しているのね。もう少し休んだほうがよかったんじゃないの〜!」

 はるかさんがこんなことを言ったのは、本気で、やよいさんに元気がないことを心配していて、なんとか気持ちを引き立ててあげたいと思ったからでした。

 やよいさんは、「怒りや焦り、恨みや嫉妬も、喜びや楽しみと同じようにちゃんと感じて、表現してみよう。」と決意したことも思い出していて、チャンスだと感じました。

 「朝から、私が一生懸命してきた仕事を否定されるようなことを言われて、すっかり落ち込んでしまったんです。」

 チームのほかの仲間たちが、はっと顔を上げて、やよいさんを見ています。やよいさんが「落ち込んでしまった」なんて口にすることが珍しかったからです。すると、どうでしょう。はるかさんの返事はこうでした。

 「え〜!そんなことを言う人がいたの??私の知らないところで、そんな嫌なことがあったんだ〜!!」

 やよいさんはビックリしました。何を言うの!?それを言ったのはあなたでしょうが!!

 その時です。向かいの机の男性が、やよいさんに目配せをしました。口元がニコニコ笑っています。

 あ!

 やよいさんは気付きました。

 「はるかさんは、自分の発言が私の仕事を否定することになるなんて、まったく気付いていないんだ!」

 なんだか、体から力が抜けて、笑ってしまいました。さくらさんが「天然ボケ」と言っていたけど、こういうことなんだ〜と思うと、自分を否定されたと受け止めて落ち込んでしまった自分まで、なんだか可笑しくなってしまいました。

 「そーなんですよ。私の仕事がムダだったみたいに言う人がいて、がっかりしていたんです。でも、まぁ、そんなこと言っていないで、元気出して仕事しますから、心配しないでくださいね。」

 やよいさんははるかさんにそう言うと、いち、にの、さん!と気持ちを切り替えて、まずは机の書類に集中することにしました。

 お昼休みになって、今日はとお誘いを断って(これも珍しいことでした)、ひとりで食事に出たやよいさんは、この2週間、自分を見つめたり、気持ちを切り替える練習をしたことは本当によかったと思い返していました。今朝の落ち込みも、以前ならどれほど引きずったかしれません。なのに、じっくり味わったつもりでも、時計での時間に直すと、わずか1時間足らずのことでした。

 食事中、改めて今朝のできごとを思い返したやよいさんは、はるかさんの提案についても、冷静に考えてみました。自分の努力がどうだったかは別にして、実害があるかどうかです。

 合同ミーティングから得ていたアイディアは、やよいさんにとっては貴重なものでした。けれども、それが正式な形で存在しなくても、すでに連携がとれるメンバーがいるので、実害を被らずに済ますことができそうです。

 実害がないなら、はるかさんの思い通りでもいいか。

 やよいさんは、形式にこだわっていた自分にも気付くことができました。大事なのは合同ミーティングから得られる連携やアイディアでした。それがホワイトボードに「合同ミーティング」と書かれなければ意味がないかのように感じていたことに気付いたのです。

 これいいな、とってもいい。実害がないって考え方、好きになれそう!

 やよいさんは午後の仕事に戻りました。

 すると、面白いことがおきました。

 朝のミーティングの後で外回りに出ていたチームのメンバーが戻ってきました。そして、大きな声で言いました。

 「いやぁ!出先で、ものすごくおもしろい情報を耳にしたんだよ。確認したんだけどさ、確かなことらしい。これってウチのチームのみんなにも、Bチームにも伝えたいんだ。新規のお客様が開拓できるかもしれないんだよ!さっそくBチームに緊急合同ミーティングを申し込むよ!いいね!!」

 その人は、チームリーダーの背中を押すようにして、Bチームのリーダーのところへ行ってしまいました。

 はるかさんがポカンとしています。

 あれは打ち切りって言ったじゃないのと思っているのかしら。
 それとも、今何が起きたか、聞き取れなかったのかしら。
 それとも、聞こえてはいたけど、理解できていないのかもしれない。

 やよいさんは、ほかのチームメンバーが、やっぱりニコニコして、やよいさんに目配せを送っていることにも気付きました。それで、ああっ!と声を立てそうになったのです。

 これ、偶然じゃないんだ。

 議論の場で、はるかさんに反対意見を言っても、はるかさんは言い返して意味があるのないのと言い合いになるだけだったろう。

 でも、こうして、実際に合同ミーティングの必要が出たからといえば、朝のミーティングの「次の合同ミーティングで、この会議は意味がないから中止と提案する」というのは、それこそ意味がなくなってしまう。そういうことなんだ〜。

 やよいさんは、「言葉で言われたことは、その場で言い返して、言い負かす、それができない時は自分の負け」といった、単純な構図でしか考えてこなかった自分にまたまた気付いてしまいました。そして、チームメンバーのやり方を、これはいいなぁと感心して、こころから感謝がわいてきました。

 なにより、やよいさんはうれしかったのです。
 合同ミーティングを持つようになる前までは、こういうよい情報があっても、チーム内だけでこそこそと共有して、Bチームより売り上げがよかったと言っては盛り上がっていました。もともと、担当地域が違うのですから、Bチームと競う意味がないのですが・・・。よい情報を共有して、AチームもBチームも成果をあげようという考えに、チームメンバーがこれほど理解を示してくれていたのだとはっきりわかったことが、うれしかったのです。

 チームリーダーが戻ってきました。明日の朝は合同ミーティングと決まったそうです。

 やよいさんの机の上の書類も、あと少しで片付け終わります。