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はじめに

1 イライラ合戦

2 まず一歩

3 もう我慢できないっ!

4 こんな会社辞めてやる

5 自分の心にもぐりこめ!

6 本心を語ろう

7 出会えた喜び

8 繰り返される人間関係

9 必要だったから

10 はるかさんの自己受容

11 シンクロニシティは突然に

12 やよいさんの自己受容

13 ますみさんの生き方

14 再スタート

15 決意を行動に

16 それぞれの人生

おわりに

いいんだ!

  はるかさんの自己受容

 やよいさんが自分の人生に繰り返されてきた残念な人間関係を断ち切ろうと決意した頃、はるかさんは屈辱感でいっぱいになっていました。

 やよいさんがお休みの間、やよいさんが担当していたお客様はチームのメンバーで分担することになっていたのですが、二度三度連絡を取ると、先方から「やよいさんのお休みが終わったら連絡をいただければいいですよ。」と言われるようになってきました。

 でも、そういう反応をされているのははるかさんだけで、他のチームメンバーはそのようなことはありませんでした。

 はるかさんもすでに気付いたとおり、やよいさんの仕事は濃やかで、お客様のニーズに最大限応えるものでした。だから、お客様の反応も、ある程度理解できるのでした。

 けれど、はるかさん以外のメンバーは、「はるかさんでなければ」とは言われていないことが、はるかさんを辛くしました。

 結局、私の仕事は誰よりも劣っているってことじゃない。いえ、仕事というより、私という人間が、劣っているということね。

 はるかさんはそう思うと、悔しくてなりませんでした。

 はるかさんはやよいさんより10年も長くこの仕事をしてきました。耳が聞こえにくくて、職場の人々の冷たい仕打ちを受けたことも数々ありながら、この日までなんとか大きなミスもなく過ごしてきました。

 けれど、はるかさん自身が派手な仕事や責任を避けてきたために、実は「大きなミス」につながるような仕事を引き受けてきたわけでないことも、自分でわかっているのです。

 また、はるかさんは、やよいさんのさまざまな心遣いや濃やかな仕事ぶりに気付きはしましたが、同じことをしろと言われても、自分にはできないとも感じていました。

 はるかさんは、細かいことに気付くのが苦手でした。加えて、気付いたことがあっても、それが正確な情報・状況に基づいたものであるかどうかに自信が持てず、行動に移す勇気がわかないのです。実際に、気付いたことが間違っていて、行動に移さなくてよかった!と思うことがよくあるのです。「これは大丈夫」と確信を持ってしたことでも、実は間違っていたということもたびたびです。

 けれども。

 はるかさんは、この日初めて気付きました。

 私は細かいことに気付くのが苦手だけれど、それで本当によかったのだと思う。もしも私が細かい性格で、あれもこれも気付いてしまったら、聞こえにくいことも今よりもっと辛くて、悩みの種になっただろう。けれど、もともとうっかりした性格だから、聞こえにくくても「まぁ性格がこれだから」と思って気が楽になるし、うっかりしても「まぁ聞こえにくいから」と思える。聞こえにくいことも、うっかりも、人には迷惑かもしれないけど、私自身にとっては、どちらもなくてはならないことなんだわ。

 そうして、改めて人生を振り返って、自分の性格と特質とが、どれほど自分を深刻の淵から救ってきたか理解したのでした。

 私はうっかりでいい。
 聞こえにくくていい。
 これが私なのだから。


 はるかさんはそう思うと、心の中がとてもすがすがしくなっていきました。何かから解放されたように、からだからも心からも力が抜けていくような気がしました。

 いつの間にか涙がこぼれてきました。ふいても、ふいても、こぼれてきます。

 そうか、これでいいんだ。
 誰かと自分を比べるのはもうやめよう。
 もう、自分をいじめるのはやめよう。
 私の人生はかっこ悪いけど、これでいいんだ。


 いい歳になったのに、泣きながら笑っているのね私。はるかさんはその気持ちを誰かに話したくてしかたがなくなりました。

 はるかさんはこうして、自分の生き方に、ずっと前から続き、今も、そして未来へも続いていく一本の道を見つけたのでした。