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はじめに

1 イライラ合戦

2 まず一歩

3 もう我慢できないっ!

4 こんな会社辞めてやる

5 自分の心にもぐりこめ!

6 本心を語ろう

7 出会えた喜び

8 繰り返される人間関係

9 必要だったから

10 はるかさんの自己受容

11 シンクロニシティは突然に

12 やよいさんの自己受容

13 ますみさんの生き方

14 再スタート

15 決意を行動に

16 それぞれの人生

おわりに

いいんだ!

  出会えた喜び

 ところで、はるかさんはどうしていたでしょう。

 始めは、やよいさんが1週間休みになったら、せいせいするだろうと思っていました。だいたいやよいさんは今年の異動で来た人だから、休んでもそれほど影響があるとは思えませんでした。

 ところがです。
 はるかさんは初日から仕事に支障をきたしている自分に気付きました。やよいさんが来る前に、自分の聞こえなさを鬱陶しがっていた人たちに、「今なんて言ったの?」と気軽に質問できません。自分が思っていた以上にいろいろなことを聞き漏らしてしまったり、勘違いしてしまっているのです。

 それに、やよいさんが受け持っていたお客様をかわりに担当してみて、驚くこともありました。やよいさんがお客様の細かな要望に当たり前のように応えていたことを知ったからです。はるかさんには「そんな無理なことできません。」と即答したくなるようなことでも、やよいさんは「なんとかできないか考えてみます」と答えていたようなのです。そして、実際になんとかしてきたらしいことがわかってきました。

 さらに、やよいさんがさりげなくやっていた、細かな仕事の数々。ちょっとしたメモや、立ち話程度の打ち合わせ、事前の連絡、事後の報告、そんなものが、いかに仕事をしやすくしていたのかも気付かずにはいられませんでした。

 やよいさんはそんなことを当然のことのように、さりげなくしていたのです。

 はるかさんは混乱してきました。

 やよいさんって、なんなのだろう。
 私にはよく分からない人だ。
 やよいさんと同じことは私にはできない。
 やよいさんの仕事はやよいさんにやってもらおう。
 私は私の仕事だけしていればいい。
 やよいさんに文句をいうのはやめよう。
 悔しいけど。


 そこへ、上司が来て、やよいさんがもう1週間休暇を延ばすことになったと告げました。

 ああ。

 はるかさんは思わずため息をつきました。



 休暇2週間目に入ったやよいさんは、自分をみつめること以外に、いままでなおざりにしてきたことを少し見直してみようと決めました。

 まず、自分を見直すのに使う時間を決めて、気持ちを切り替える練習をしようと思いました。朝は6時に起きて、朝食をゆっくりとろう。自分を見つめる時間は午後1時から4時の間だけと決めよう。掃除や洗濯を毎日しよう。4時過ぎたら、かならず外出して街の様子に触れよう。毎日1時間本を読もう。晩ご飯の後片付けをさっさと済ませて、DVDを観るのも楽しいかも!

 やよいさんは、朝ワクワクしながら目覚める自分に気付き、うっとりしました。「こんな気分、今までの人生であったかしら??」一人暮らしの自分の顔が、自然と笑顔になっているのがわかります。

 やよいさんは、嬉しかったのです。自分の本心を言葉にして紙に書き出してみてはじめて、自分自身に出会ったような気がしたからです。あまりかっこよくなかったけど、「見つけた!出会えた!」というその点が、なんだかとても嬉しかったのです。

 部屋の埃は日に日に減り、夕暮れの美しい町に出て、外の空気を胸いっぱい吸い込みました。どの本を読もうかと、大きな本屋をはしごするのも目新しく、晩ご飯のメニューを考えつつスーパーを歩くのもウキウキしました。

 そんな気持ちのままで、やよいさんは更に深く、自分の本心を明らかにしていこうとしました。

 まずはあの紙に書き出した赤い文字のうち、まだ答えを探していない数行から始めることにしました。