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はじめに

1 イライラ合戦

2 まず一歩

3 もう我慢できないっ!

4 こんな会社辞めてやる

5 自分の心にもぐりこめ!

6 本心を語ろう

7 出会えた喜び

8 繰り返される人間関係

9 必要だったから

10 はるかさんの自己受容

11 シンクロニシティは突然に

12 やよいさんの自己受容

13 ますみさんの生き方

14 再スタート

15 決意を行動に

16 それぞれの人生

おわりに

いいんだ!

  本心を語ろう

 やよいさんが紙に書き出した赤い文字。


 私は負けてしまった。
 私はあの会社にいる意味があるのだろうか。
 どうしていつもこんなことになるのだろう?
 どいつもこいつも、どうして私のことを否定するんだろう?
 私はこんなに頑張っているのに。
 もう、こんな会社、辞めてやるっっ!




 先輩のくせに、仕事はちゃんとしてほしい。
 人の話はちゃんと聞いてほしい。
 くだらないミスをして私をイライラさせないでほしい。



 やよいさんをはっとさせたのは、
 私はこんなに頑張っているのに。
 先輩のくせに、仕事はちゃんとしてほしい。

 のところでした。

 そうなのです。やよいさんはいつもずっと「頑張って」きました。その分、特に年上の人には「ちゃんとしていてほしい」と思ってきた気がします。

 それは、やよいさん自身が、自分に対して、そうでなくてはならないと思っていたことだったのです。

 やよいさんのお父さんは弁護士です。お母さんも弁護士の卵だったころに知り合い、結婚して、家庭に入った人でした。特に厳しく育てられたというわけではないけれど、まじめな家庭ではありました。

 やよいさんはお父さんやお母さんが大好きでした。だから、少しでもたくさん喜ばせたかったし、できれば両親のような大人になりたいと憧れていました。

 そのために、いつも「もっとがんばっていい子になろう」と努力してきた自分に気付いたのです。

 さらに、やよいさんは三姉妹の長女でした。

 なにをしても姉にはかなわないからと、やよいさんの影にかくれるようにいつもくっついてくる次女、世渡り上手で天衣無縫の三女をみるにつけ、お姉さんとして自分はしっかりしなくてはいけないと思っていました。

 自分が妹達の面倒をみることを、両親はいつもとても喜んでくれていると感じていたから、なおさらいいお姉さんになろうとしてきたのです。

 でも。

 本当は、そんなにがんばりたくなかった自分がいたことに、やよいさんはその時初めて気がつきました。

 両親に誉められたくて、頑張りすぎたときがあったのに。
 本当は妹達みたいに、甘えたりわがまま言ったりしたかったのに。


 そういう感情を押さえ込んできたのだと分かったのです。

 私は頑張って、年上の人としてちゃんとしている。そのために、いろんなことに気を遣って、我慢もしている。なのにあの人はどうしてそれをしないの?私ばっかり頑張らなくてはいけないなんて許せない!

 そんな感情から、ちゃんとしていない年上の人にイライラしたのだと気付いたのでした。

 やよいさんにとって、どれもこれも大発見でした。

 自分の感情の裏側にひそんでいた本当の気持ちの一端に触れて、やよいさんは驚くと同時に、興味がどんどん湧いてきました。

 他の赤い字についても、その感情の裏側を探ってみようと思いました。

 私は負けてしまった。
 ・・・私はいつから、誰と勝負をしていたのだろう?誰とも競っていなかったはずなのに、誰に負けたの?・・・あ、そうだ。お父さんが今度の訴訟は負けたよと、とても残念そうに話すのを聞いていて、負けるのはとても辛くて悪いことと思ったような気がする。そういえば、子どもの頃から、私は勝ち負けにすごくこだわって、いつも「勝ちたい」と思ってきたっけ。

 私はあの会社にいる意味があるのだろうか。
 ・・・では、どうだったらこの会社にいる意味があるって感じるのかしら。私の意見が何でも尊重されて、いつも売り上げ一位で、偉くなって?・・・そんなことが意味のある存在かしら?何か違う。今回お客様を怒らせたのがきっかけで考え始めただけで、この疑問ってもっと前から持っていたものだったのではないかしら?

 もう、こんな会社辞めてやる!
 ・・・もう、ウソはつけないな。わたし、はるかさんがどうだろうと関係なく、ずっと会社勤めを辞めたかったじゃない。今回の出来事を言い訳に、辞める理由ができたと思ったのでしょう。

 そんなふうに、やよいさんはひとつひとつ、自分の本心と向き合っていきました。

 紙は1枚埋まったけれど、たくさんの時間がかかって、まだ先がありそうなのに、1週間の休暇はもう終わろうとしていました。

 やよいさんは考えました。

 ここで会社に戻ったら、せっかく気付きかけたことを見失ってしまうかもしれない。もう少し、時間をかけて自分と向き合いたい。

 もう辞めてやると思って出てきた会社だもの、クビになってもともとと思って、あと1週間の休暇をお願いしてみよう。

 やよいさんは上司に電話をして、勇気をふるってさらに1週間の休暇を申し出ました。上司は、なんとか、認めてくれました。どうやら仕事はチームのおかげで滞りなく進んでいるようです。

 やよいさんは、さらに自分の今後のことについても考えを明確にしようと決意しました。